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東京・キネカ大森が贈る先付ショートムービー「もぎりさん」の主演を務める片桐はいり。キネカ大森とは30年以上の付き合いとなり、当劇場に映画鑑賞に通いつめた縁から、もぎりをするようになったというのは有名な話だ。本作誕生のいきさつや撮影の裏話、もぎりの魅力まで幅広く語ってもらった。

キネカ大森での撮影は、我が家にカメラが来ちゃった感じで、恥ずかしさもありました

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―― 全6話からなる本作は、キネカ大森で上映作品の本編前に併映される短編。最初に企画を聞いた際の印象は?

「キネカさんで何か映画を作りたいと最初に伺っていて、『何そんな大きなこと言っているの。失敗したら、大変じゃない』って話していたんです。そんな中、企画書をいただいて、そこに“片桐はいりの夢を叶える企画”って書いてあって、『えー、私そんなこと一言も言ってないのに』って(笑)。地方には小さい映画館がいっぱいあるんですけど、私にはそういう映画館を巡るような作品を作りたいって夢があったんです。私はもともと舞台の人間なので、パフォーマンスで全国の映画館を回りたいって、制作の東京テアトルの方に話していました。その方はその方でキネカ大森で映画を作りたいっていう夢があって、うまいこと双方の夢がシンクロしちゃったんですね(笑)。最初は片桐はいりの名前でやることになっていたんですけど、大九監督が『『もぎりさん』でやらせてください。はいりさんはキネカ大森だけのものじゃないんですから』っておっしゃってくださって(笑)、『もぎりさん』になりました」

―― 監督は『勝手にふるえてろ』の大九明子監督と『ハローグッバイ』の菊地健雄監督。それぞれ3話ずつメガホンをとった。大九監督、菊地監督もキネカ大森と縁が深く、片桐にとって二人とのタッグは自然な流れだったという。

「お二人ともキネカ大森絡みでよくお会いしていたんです。菊地監督は忘年会にいらっしゃいますし、大九監督ももともとお友だちで、キネカ大森に観客でいらっしゃった時に、偶然私がもぎったこともあったりして。大九監督は『勝手にふるえてろ』でもご一緒しましたが、この企画に関してお願いするなら、当然このお二人だろうなって思っていました。それが偶然にも、私が今一番面白いと思っている日本映画の監督たちだったというわけです」

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―― 物語はキネカ大森の改装前ロビーなどを舞台に、映画、映画館、映画好きの人々の関係を描いていく。

「最初に映画館でこんなことあるよね、あんなことあるよねって話をしていて、そこに私がこんなことがあったら面白いと思います、って冗談を交えた話もしたんですけど、それを汲み取ってくださったり、予想外の面白いことにしてくださったり、いい塩梅のお話ができていました。大九監督はご自分の方に持っていってくださった感じで、菊地監督はキネカ大森にやっぱり縁のある鈴木太一監督と一緒に脚本を作ってくださって、私の話をうまく盛り込んでくださいました。脚本を読んだとき、お二人それぞれのカラーが出ていたし、ティストが違って面白かったです」

―― 1話3分弱と上映時間は短いが、ストーリー性があり、クオリティは高い。時間との戦いだった撮影はハードだったそうで…。

「1話のセッティングなどで時間が押してしまい、撮り終えるのか?という心配が一瞬よぎりましたが(笑)、それがむしろよい緊張感となりました。本当に時間がなかったので、撮影の間、座らなかったし、水も飲みませんでした。ほぼ出ずっぱりですからね。その点ではハードだったかもしれませんが、逆に待ち時間がないとこれだけ疲れないのかって思いました(笑)。待ち時間に、ダラダラしたり、お菓子ポリポリ食べたり、そういう行為が人間を疲れさせるんだなって。だからこの現場はそれほど疲れず、ピンピンしていました。撮影が終わった日の朝はさすがに休みましたが、翌日は普通にキネカに映画を観に行っていましたね」

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―― なじみ深いキネカ大森での撮影は、「我が家にカメラが来ちゃった感じで、恥ずかしさもあった」と片桐。

「自分ちの前でロケやっている、まずいまずいって。その自分ち感の一方、撮影はこの時間までに終わらないといけないっていうお尻が決まっていて、漏れがあったらチャンスは2度と作れないかもしれないっていう事態だったので、そういう意味で緊張感はすごかったです。終わった瞬間は、みんなボーっとしてましたね。でも、本当に大九監督も菊地監督もカッコ良かったんですよ。大九監督の1話のワンカットに時間がかかり、そこでみんながドキドキしはじめたんですけど、大九監督が『慌てず、騒がず、私の中ではちゃんと固まっています。私についてきて』っておっしゃって。みんな大九監督に任せようって気分になって、そのあとの菊地監督はいろんな方の助監督をされていたこともあってもう的確な指示で撮影が進んで、でも時間なくてもちゃんとお芝居でNGが出たりする(笑)。お二人の現場での力を最大限に魅せていただきました」

―― この取材の前日も、キネカ大森に行って、もぎってきましたと語る片桐。片桐にとって、キネカ大森はリラックスできる場であり、日常の一部といえそうだ。

「昨日は買い物ついでに行ったんですけどね。普段、キネカに映画を観に行ったら、カウンターのところでおしゃべりするんですけど、観客のみなさんが「はいりさーん」って言いながらチケットを渡してくるので、もぎっています。中には、本気でアルバイトしていると思っている方もいらっしゃるし、何やっているんですか?っていう人もいらっしゃるし、反応はさまざまです。話題にしていただけたら、嬉しいですけど。でも、最近私が映画館にいたり、もぎったりするのが当たり前になってきたのか、ツイッターにも載らなくなってきましたね(笑)」

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―― 『もぎりよ今夜も有難う』など、著作で映画愛を語っている片桐。映画やもぎりの魅力とは?

「映画を創るってすごい作業ですよね。撮影や編集、宣伝を一生懸命して、やっと公開になって、それを最終的にお客様にお出しするのが、映画館ともぎりの仕事。いくらいい料理ができても、最後に持って来るウエイトレスが感じ悪かったら台無しでしょ?もぎりは、映画にとって大事な仕事だ、と自負しています。個人的には、単純に破くのが好きなんですね(笑)。もぎるという動作が好き。切り取り線を見たら、切りたくなりませんか? 最近シネコンだともぎることも少なくなっていて、そのうちチケットすらなくなるかもしれないから寂しいですね。昔は前売り券など映画の記憶が残せるものが中心で、私は半券を手元に置いておきたい派なんです。これを観たねっていう記憶は大事かなと。何月何日に私はここまで行って、こんなことをしたんだっていう記憶。人生にそういうのがあったほうがいいなって、思ってしまうんです。最近断捨離が流行っていますが乗っかって、いろいろ捨てたがゆえにあとで後悔したものも多くて。映画の半券を見ただけで、いろんなことを思い出したりして、大事な財産になると思うので、取っておきたいものの一つです。映画で過ごした幸せな時間を、半券を見たら思い出せるのがいいなって」

―― キネカ大森の観客にとっては、このショートムービーも映画とセットで記憶に残るだろう。

「記憶に残ったら嬉しいです。でも、早く映画を観せてほしいと思う人もいるかもしれないので、そういう方には居酒屋のお通しって思ってもらったらいいかもしれません(笑)。お通しは断れるらしいですけど、この映画は断れないので申し訳ないですが(笑)。映画館でないと起こらないことがたくさん起こってほしいんです。それが好きで映画館に通っています。映画館で映画を観ることを忘れてほしくないというか、滅ぼしたくないと思ってるんです」


Writing:杉嶋未来

インフォメーション

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キネカ大森先付ショートムービー

『もぎりさん』


現在実施されているキネカ大森のロビー改装工事終了後、7月13日から月替わりで1話ずつ上映。第1話のみ、6月末までキネカ大森の公式サイトにて公開される。また「もぎりさん」スタンプラリーで全話をコンプリートした人には、特製ステッカーと名画座招待券1枚をプレゼント。抽選で1名に、キネカ大森の名画座上映作品の決定権が贈られる。スタンプラリーカードは、7月13日から7月末に配布予定。さらに7月13日から20日に名画座2本立てとして『勝手にふるえてろ』と『ハローグッバイ』をスクリーンにかけ、7月14日には片桐、大九監督、菊地監督が登壇する「もぎりさん」全6話のイッキ見上映を開催予定。

■『もぎりさん』公開記念『勝手にふるえてろ』×『ハローグッバイ』キネカでしゃべれ場!?トークショウ開催決定!
日程:7月14日(土)『ハローグッバイ』最終回上映終了後
※上映スケジュールは決定次第、劇場公式サイトで発表
登壇者:片桐はいり、大九明子監督、菊地健雄監督、(予定)
恒例の名画座しゃべれ場トークに加え、『もぎりさん』1話~6話一挙上映つき!

▼詳細は劇場公式サイトまで


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